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関連する研究の中での位置づけ

 これまで、開発に関する研究と紛争に関する研究は各々独自的に行われてきており、総合的なアプローチは少なく、研究成果も乏しい。しかし、研究の必要性が高いという国内外からの指摘を受け、特に開発ドナーを中心とした一定の研究が徐々に進められつつある。世界的な議論では、OECDのDACによる報告書が、紛争予防のための開発の役割に言及している。

 日本においては、JICAが平和の実現に向けた開発援助の役割及び支援の方向性を検討する目的で、1999年10月に調査研究「平和構築―人間の安全保障の確保に向けて―」を開始した。開発と平和構築を積極的に結びつける画期的なプロジェクトであり、注目に値する。また人間の安全保障をコンセプトにした研究も、開発と平和構築を総合的に捉えるものが少なくない。武者小路公秀の研究グループの「人間の安全保障とNGO」の研究などがこれにあたる。予防外交のコンセプトからこの問題に関係する研究もある。勝俣誠の「アフリカの地域紛争と予防外交」や横田洋三らの「予防外交」などの研究がこれにあたる。本研究は、こうした研究の積み重ねの上に立って、開発と平和構築の問題を直接的に取り組むものであるが、開発の持つ二面性に着目している点において、他の研究とは異なる。一方、外国での研究は、日本においてよりもより具体的に進められてきた。これには、日本よりも学際性や実践性を重んじる研究スタイルが影響しているといえるだろう。UNDPの'Human Development Report'や World Bankの'Post-Conflict Reconstruction'といった報告書が示すように、国際機関はこの問題に実践的に取り組む姿勢を見せている。外国においても現場の実践的な要求が研究を生み出しているといえるが、こうした実践的な課題を学術的な積み重ねと十分に絡めながら進めている研究スタイルはまだ今後に多くを待つ状態である。

 以上の諸点から、本研究は世界的なレベルから貢献すべきアプローチといえる。


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