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研究計画・方法

 本研究は、紛争と開発の複雑な関係を包括的に考察し、平和構築のための積極的な実践政策としての開発援助の可能性を探ることを目的としており、平成15年度、16年度、17年度、18年度の4年で完結することを予定している。具体的には、(1)開発援助における平和への配慮、(2)開発援助における国際機関や国際NGOの役割の把握とそれらの平和と紛争に対する影響の考察、(3)人道緊急援助が中・長期的に該当国に与える開発への影響の考察、を中心に研究を進める。

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(1)開発援助における平和への配慮においては、以下の3つのフィールドを中心にして研究を進める。

 具体的な実態の調査をもとにしながら、理論的なフレームを構築するのが本研究のスタイルである。具体的には、A)バルカン地域、B)アフガニスタンを中心とした中東・中央アジア地域、C)中国および東南アジアである。バルカン地域は、いうまでもなく、いわゆるユーゴスラビア紛争が起こった地域を含んでおり、紛争原因としての開発、あるいは開発の未発達、また平和構築のための開発の役割がテーマとなる。同様に、アフガニスタンを中心とした中東・中央アジア地域は、(旧)ソ連のアフガニスタン侵攻、アメリカによるアフガニスタン戦争を経験している。これらの地域では、紛争後の国家再建及び紛争要因の除去を考察する研究は不可欠である。中国は、多くの国と国境を接し、領土をめぐる紛争をしてきた国である。また、貧困な国として多額な開発援助をもらってきた国であるが、最近では経済発展が目覚しい。開発と紛争という視点からみると多くの課題を発見できる可能性がある。最後に、紛争後の復興および再発予防をみる上で、カンボジアを中心としたインドシナや東ティモールなどの経験を総括する必要がある。

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(2)地域として具体的であっても、紛争と開発、あるいは開発と平和構築の関係の研究は、視点を絞らなくてはその複雑な構造を明らかにすることは困難である。そこで、開発援助における国際機関や国際NGOの役割の把握を中心にして研究を進める。国際機関や国際NGOへの聴き取り調査や資料収集調査により、紛争と開発の関係を浮かび上がらせる。国際機関としては、UNDP、UNICEF、UNHCR、UNESCO、世界銀行などである。もちろんこうした機関の地域での事務所も具体的なターゲットである。国際NGOとの連携も重要である。具体的にはInternational Alert, Human Rights Watch, Amnesty International, Oxfamなどを中心に調査を進める。

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(3)人道緊急援助が中・長期的に該当国に与える開発への影響の考察は、難民支援を視野に入れた調査となる。人道緊急援助が平和構築においてもたらしている肯定的効果とともに否定的効果にも調査を進める。具体的なフィールドトしては特にA)バルカン地域、B)アフガニスタンを中心とした中東・中央アジア地域となる。UNHCRなどの国際機関やOxfamなどの国際NGOは情報源としても調査対象としても重要である。

 このように3つの研究項目は相互に関連しており、この3つの研究項目を中心としながら、包括的に開発と紛争の諸問題にアプローチする。


【平成15年度】

 平成15年度の前半は実施のための情報収集を中心に行い、後半からは基礎的な現地調査を行っていく。特に各国の地域性や歴史の把握もこの調査では重要であることから、前半においてこうしたデータの蓄積を行う。日本における基礎的なデータの収集を積極的に行う。国際的な調査は資料収集を中心とした準備的な位置づけとなる。 具体的な研究フィールドとしては、バルカン地域の調査は定形、アフガニスタンを中心とした中東・中央アジア地域の調査は中西、中国の調査は櫻井が、東南アジアは佐藤が担当する。開発援助・緊急人道支援に関わる国際機関の調査は大坪と大平が担当し、国際NGOの調査は児玉が受け持つ。


【平成16年度】

 2年目の調査は、初年度の文献を中心としたデータ収集をベースにして、具体的な項目を調査することになる。国際機関と国際NGOの二つのカテゴリーでの基礎的な聞き取り調査を目標とし、1年目の調査結果を基に、比較分析をし得るような共通質問項も作成したうえで、それぞれの担当者が各地域で質問票を配布する。平和構築のための開発の役割を検証するには、一つの地域での検証では不十分であることから、各分担者の専門地域である4地域を軸に現地調査を実施する必要性がある。


【平成17年度】

 3年目の調査は、2年目の基礎調査を受け、分担者が各分担地域で本格調査をすることを主とする。その際、上記(1)(2)(3)の3つの主要な調査の柱における相互関係が調査の中心となる。各地域の現地調査は、民主化の定着及び紛争の構造的原因の排除への貢献度という視点から相互比較分析される。16年度同様、フィールド調査を主とし、現地での研究機関、国際機関、国際NGOとの研究協力・連携が不可欠である。つまり各地域、各国際機関、各国際NGOなどのデータの相互関係を、紛争と開発、開発と平和構築の視点から捉える作業を17年度は行 うこととなる。


【平成18年度】

 最終年度は、それまでに得られたデータをもとに、総合的な考察を行うことになる。開発と紛争を取り巻く要因は複雑に構成されており、得られたデータから結論を得るのは容易な作業ではない。研究グループが対応してきた国際機関や国際NGOなどのメンバーとも一緒になって膨大な資料をもとに、複雑な関係を紐解く作業をし、最終報告書を仕上げる。

 なお、各年度における各分担者の海外調査費用は、調査地域の状況を考慮して配分するものとする。割合の目安として、地域調査の3に対して、国際機関と国際NGO等の調査を2とする。また、役割分担やフィールドワークは下図で簡潔に表される。


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