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児玉、杉本、新垣、櫻井、中西、大平、佐藤、二村
佐藤:
研究成果は教育・研究目的の出版によって公表してはどうか?何か具体的なものを残した方が良い。
児玉:
学際的な問題になり、そこに難しさがあるため、あらかじめ統一的な構図を考えておく必要がある。
佐藤:
どうやって融合させてゆくかが問題。
中西:
例えば経済格差というものがどのように紛争の火種になっているのかということを大坪はやりたいと言っている。
佐藤:
いったいなぜ紛争になるのかという原因の究明などを行いたい。4年終わった時点でどこまでの成果を求めるのかを考えておきたい。単に原因究明でも良くない。それを如何に援助政策の中に活かしてゆくのかが問題。通過点としては紛争を理解しておくことはまず必要。
佐藤:
国家の安全保障から、人間の安全保障へと移行している。開発の目指すものは個人の安全であるという流れがあった。国連でも社会開発サミット以来、単に開発を行うのではなく社会正義を追求しなければならないという指向が見られる。
国連の設立趣旨の一つである国際平和との関係で、PKOがこれまで活動してきているが、従来の停戦監視の役割から、暫定的な行政活動、民主的な政府設立といった、開発を含んだ包括的なアプローチが行われるようになっている。平和創造、平和維持、平和構築という段階の中で、平和構築は第三段階に位置づけられていたが、カナダのCIDAのアプローチでは、平和構築により一層包括的な活動としての位置づけを与えている。JICAもこの動きに追従している。
JICAでは人災による現場にも日本から人材を派遣できる方途を模索してきた。私自身は紛争は人間社会に必然的なものとして捉え、それを押さえつけるのではなく、むしろそのマネジメント、つまり武力紛争への発展を防止することが重要であると考えている。司法の独立や、公正な裁判がなければ、自力救済の必要からの暴力が発生する。私の研究課題としては、紛争の平和的処理のための民主的政治プロセスと人権擁護と正義へのアクセスのための法制度整備支援に焦点を当てている。
紛争の構造的原因の緩和のための社会開発が必要であり、日本の役割で言えば(1)民主化、(2)法の支配、(3)社会開発の分野で経験を有していることを活かした協力が必要であろう。また、非政府、つまり民間の協力体制を整えることも強化されるべきであるし、国際機関との連携も重要である。難民に対しても排除政策ではなく、受け入れた難民から逆に何かを学んでゆくことが考慮されるべきであろう。
中西:
紛争と開発というキーワードでインターネット検索を行い、自分なりに先行研究を行った。佐藤教授の報告の中から、先行研究に照らして新たな領域を考えてみると、抽象論で関係機関の連携等は詳しく論じられている。
佐藤:
ハーバードで私は、UNTACでの事例研究を出してくれと要求された。
中西:
事例研究に終止するのではなく、事例を研究していく中から一定のパターンのようなものが見出せればと考えている。
児玉:
紛争が起こった後の事例研究については分かりやすいが、起きてないところでは開発は開発の論理があり、それと社会不安との関係は割とややこしい。開発の中に紛争に関する意識を折り込んでゆくのは重要だが、それを実際どのようにやってゆくのかが問題。
中西:
まだ起こっていないが起こるであろう紛争を考える上では、既に起こった紛争の事例を参考にすることは有意義。ただ、地域的な問題とグローバルな問題との関わりを考慮することは必要だろう。
児玉:
1950年代半ば頃から研究者の間で平和研究が始まる。当時は核戦争を防止するために何ができるかというのが関心事項だった。その中心地は欧米であったが、フランスだけは別の論理でやっていた。
1960年代の終わりくらいになると南北問題がクローズアップされてきて、後にガルトゥングの理論が出てくる。方法論としては、一番最初に平和学で出てきたのは統計的手法であった。ガルトゥング自身が数学の博士号を持っていたこともあって、数式を用いた分析を行った。それは非常に新鮮な印象を与え、平和学には未来があるという展望を与えていたが、さらにゲーム理論が出てくる。経済学でも一年生に教えるものとして「囚人のジレンマ」が今では当たり前にあるが、それに先鞭を付けたのも平和学であった。
そうこうしているうち、社会情勢自体が大きく変化してきた。平和運動が盛んになり、何十万何百万の人が集まりデモを行ったりする。1970年代の終わりくらいにはNGOが注目を浴びるようになり、そのような社会運動と平和研究との接点が求められるようになった。平和運動に関わっていた人が、平和研究に入ってくるというパターンが増えてきたのは、結局平和活動の限界を感じて研究の必要性が感じられていたからに他ならない。研究者の側からも平和運動へのアクセスは試みられていたが、それは相対的には少数派であった。NGOの事務局長の中にも博士号取得者がいることは珍しくなく、待遇的にも大学よりも恵まれていることもそれを後押ししている。
世界的な民族運動への波は、新しい世界秩序への興味関心を引いたが、最近ではいかに紛争予防するかという問題意識が高まっている。
市民運動にはいくつかの特徴がある。一つはそのアクター、構成員である。非常に教育レベルの高い参加者が多く、大卒、大学院卒というのは相当多い。革命的な活動よりも、今の社会の改善を目指す傾向が強いのは、そのアクターの社会的地位にも関係している。
組織はインフォーマルの、きちんとしたシステムを作らない団体が増えてきている。人数自体は少なくなくとも、水平的な組織を目指す方向性が働いている。NGOの価値観も、モノより自己実現などの、個性的な形で形成されてきている。
地域研究の区分としては、アジア/中東/アフリカ/南米という分類が標準的であるが、その他にも紛争解決への指向の分類がある。長期的/短期的という区分と、政治・軍事/経済/文化という区分が交錯している。援助一つを取ってみても、モノの支援なのか、制度整備の支援なのか、様々なレベルが存在する。
国際社会で活動するアクターとしては、国連、国際機関、国家、NGO等が存在するが、その中でも研究対象として精査されていないのはNGOである。
大きなNGOなどは、政府高官と結びついていたりして、NGO同士の潰し合いのような状態も見られる。つまり、まだまだNGO同士の連携については未熟な面がある。
研究対象をどのように選定し、その相互関係を考えるか、そしてそれを開発援助政策にどう活かしてゆくか等、まだまだ課題は多い。
佐藤:
短期的には、紛争直後にUNHCRが入り、しかし長期的な活動を行うUNDPの活動との連携を"Continum"という概念でとらえることが行われている。
大坪:
経済問題だとIMFと世銀の関係に置き換えることができる。
新垣:
UNHCRはストリート・チルドレンなどに対する援助にも関心を示し始めている。UNHCRはお金がなくなってきている状況がある場合、中長期的な活動を行う時に政府や他の国際機関との協力を強めてきている。
中西:
日本政府はNGOとのつきあい方に意識的になりはじめたのは比較的遅い方だと思うが、他の国では政府とNGOとの連携はどのように図られているのか。
児玉:
国とNGOの代表者が非常に密接に関連している。
大杉:
日本では96年から政府とNGOの連携が始まっている。転機が訪れたのは京都会議でオブザーバーとしてのNGOに発言権が与えられるようになるきっかけが生まれた。最近では外務省が平和構築をテーマに会議を招集するなど、活発化が進んでいる。
* * *
二村:
ポテンシャルな紛争地域研究を具体化し、地に足のついた研究として4年間で仕上げるのは少し難しいのではないか?
佐藤:
それぞれの専門分野を活かしてもらいたい。
櫻井:
同じ土俵で同じ概念で議論できないかもしれない。まず「紛争」という概念自体が共通認識として把握できていない。自分の専門領域に引き付けての議論で何か貢献できるかもそれないが、例えばフィールドワーク一つにしても、文化人類学者は調査目的を社会の改善に置いていない。
佐藤:
まず現地の価値観を理解するということからは櫻井さんの立場は理解できる。文化人類学からの紛争概念につい次回あたりご教授頂きたい。
新垣:
これまでの典型的な難民研究は、事後的対応や権利論が中心的に論じられてきた。
1. 難民問題は緊急人道援助の文脈のみで理解できるものではない、例えば難民の存在が紛争要因となることもある。難民問題が平和構築プロセスをドライブするという状況もあり得る
2. 難民は、平和構築の舞台で主要なアクターとなりうる
3. 難民問題と平和構築の連動性を、スリランカの事例で実証的に説明できればと思う。
大平:
開発の政治化が進む中、UNDPも紛争と開発の問題に関わるようになってきている。UNDPはかなり早くから現地化を行い、ネットワークを持っている。それ故の役割も国連の中で期待されている。国連全体の流れを見ていく中でUNDPに注目することは有意義であると考える。
国連内部での連携状況については未だ研究課題は多く残されている。機関相互の関係、現地事務所と本部との関係、等についても考えてゆきたい。
早期警報システムはコソボやブルガリアでも可能性が探られている。この点についての研究も視野に入れてみたい。
計画としては、国内に置ける情報収集とインタビュー、国外における事例研究として東ティモールを選びたいとも考えている。
中西:
パレスチナ、クルド、アフガニスタン、イラクといった国々の問題を考える時には、系統的に考えることが必要であろう。従来個別的に考えられてきた問題の連携性を考察してみたい。
イランにおけるアフガン難民問題、アフガニスタン復興問題を研究対象として計画している。
大坪:
世銀時代の最後の一年に、中国の改革解放がどのようにやれば緊張や社会不安を最小限に押さえられるかということに取り組んでいたこともあり、社会における格差が紛争の火種につながるのであればその辺を探ってみたい。もしそれが政策でコントロールできるとすればどのようにできるかを考えてみたい。また、紛争のリソース・コストというものを考察してみたい。
研究計画としては、所得間格差のデータベースを収集中で、その他データと組み合わせながら考察を進める。中国、インドネシア、インドに加えて、フィリピン、タイを地域としては考えてみたい。アフリカにも興味があるが、2年目3年目は地域を定めて進めてゆきたい。
佐藤:
事務局体制をしっかりと構築し、特にホームページについては英訳ページも含めてCCDIの方に外注することにする。
次回は7月4日金曜日、16:30から。
具体的に4年間の研究計画と本年度の計画を提出。
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