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第9回[2004/11/19]

参加者

研究会メンバー:大坪、大平、児玉、定形、佐藤、中西、山本
オブザーバー:川村
アシスタント:杉本、早川

来年度の計画

佐藤:

DP(ディスカッションペーパー)のNo.2は博士課程の学生である砂原さんが、No.3は山本哲史さんが書いた。若手研究会の成果として出している。まだ完成されたものではないが、新しい視点を提供しており、DPとして相応しい。若手研究者にチャンスを与える事にもなる。

9月30日にFASIDが事務局になって、文科省が声を掛け、東大やGSID、神戸大学、立教大学などが集まって「国際平和協力に関する各大学の取り組みについて」というシンポジウムが開かれた。平和構築がODAの重要課題の1つになり、人材育成が喫緊の課題とされたのを受けたもの。ネットワークを作るためにも参加した。

開発系の大学院を含めて、連携という流れを作っていきたい。東京外語大学は、ICUや国連大学と提携して、紛争地から留学生を採っているらしい。この研究会も名古屋だけが拠点ではダメで、他と連携していくべき。今までの2年間の実績をベースに成果を挙げて、次のステップを目指すべきである。

児玉:

次の科研を取るなら、バージョンアップする必要がある。何かに特化するか、包括的にするかのどちらか。

佐藤:

平和構築関係の科研があちこちで出てきている。そういう中で、無益なことでオーバーラップしないように、コーディネーションをする必要がある。もちろんコーディネーション自体が、非常に難しい事だが。

中西:

2ヶ月に1度というペースは確保すべきだろう。積み上げていかないと成果はでない。

佐藤:

学生はかなり有能なので、もっと積極的に関わってもらいたい。彼らの博士論文を書くための調査という事で費用を出してあげれば、この研究会の成果にもなるし、一石二鳥である。

中西:

そうした点や予算の使い方などを含め、来年度に向けて、佐藤さんと相談したい。

大坪:

今、人事が動いている。それも含めて考えていくべき。

成果物

佐藤:

私自身は平和構築の総論部分を研究する。全体の共通事例として提案しているスリランカに関して、既に成果としてBL(ブックレット)とDPを1冊ずつ出した。あと、ジェノサイドと地域研究のシンポジウムで発表するので、それをまとめてDPにしたい。

前回研究会以降の進捗状況としては、東大の“人間の安全保障プログラム”との協力関係を模索している。また、名古屋国際センタービルにあるUNCRDに人間の安全保障というプログラムがあり、彼らも学術機関との連携を考えているので、連携を模索している。次回の公開研究会でスリランカを特集したいので、日本のスリランカ研究者と日程の調整をしている。特に途上国を研究する場合には、良いカウンターパートを見つける事がとても重要である。カウンターパートの選定は慎重に行いたい。

スリランカに関する国内シンポジウムを1月27日にやるか検討している。対案としては、人類学者の松田先生にも話を聞いてみたい。現在、“処罰を求める”のと“処罰を求めないで許す”という両極端のことを、どう掌握していくのかについて議論がされている。これは平和構築の背骨になる部分だろう。理論的に“武力紛争”から“武力紛争ではない”ものにどう転換していくのかについて、人類学者から話を聞きたい。

* * *

次に山本さんの「人道支援と平和構築」について。既にいくつかの成果を出してもらった。

山本:

今、JICAやUNから色々と頼まれているが、いずれも同じ問題に直面している。人材がいない。日本人に来てほしいという話はたくさんあるが、適切な人がいない。非常に勿体ない話である。

佐藤:

その関係で紹介する。そちらは川村真理さん。非常勤で来てもらっている難民の専門家である。今はWFPにいる。今日はオブザーバーとして参加してもらっている。

若手研究者でも国連のポストなどを活用できると良い。

山本:

JPOなど、需要はたくさんある。

大坪:

卒業生などをJPOにどんどんとチャレンジさせると良い。

山本:

アフガニスタンでも2つのポストを探してほしいと頼まれている。日本が大規模な支援をしたDDRのRがうまく進んでいない。年齢的な制限もないし、何らかの経験を持っている知り合いがいれば、紹介してほしい。

そうした人材に関する話はこれからも出てくるだろう。色んな所にコンタクトして、人が入れるルートを確保したい。

佐藤:

多少経験不足の学生を送り込んで、現場で鍛えてもらうとか。

山本:

インターン受け入れについても、所長によってかなりスタンスが異なる。拒否する人もいれば、積極的に受け入れる人もいる。

佐藤:

ぜひBLも検討してほしい。

* * *

児玉:

昨日まで中国に行って、International Social Science Council(ISSC)の会議に出席してきた。ISSCはユネスコにオフィスを持ち、国際政治学会などが加入している、社会科学に関する最も大きな集合である。そこで”Research on Ethnic Conflict and Approach to Peace”という、Ethnic Conflictをベースにして研究を進めるプロジェクトが立ち上がった。もう1つ、”Gender Globalization and Democratization”というプロジェクトが既に立ち上がっている。どちらも欧米中心で進めてきたので、アジアにも参加してほしいようだ。内容はこの研究会に似ている。ここと協力すると、ISSCやユネスコとタイアップしやすくなる。ISSCやユネスコも平和の問題に積極的に関わり始めており、何とか協力したいと考えている。

Ethnic Conflictの方が、この研究会に直接関わってくる。私もISSCの理事になったので、色々と協力できるだろう。

国際NGOと紛争予防の研究については、ピースボートが実際の活動を行っているが、資金的な問題が発生している。国際NGOの会議が来年の9月に開かれるので、参加しようと考えている。

東ティモールの現状研究については、8月に東ティモールへ行けなかったので、1月に行こうと計画している。それらをまとめたい。

佐藤:

ある東ティモールの研究者が、今一番重要なのはReconciliationの枠組みだと話していた。裁判所をつくる余裕はないので、ローカルな伝統的なものをどう応用していくのかに関心を持っている。具体的な成果は?

児玉:

東ティモールに関するBLを書く。

佐藤:

児玉さんはGPPACで分科会を持つ。ニューヨークで私達の研究をアピールしてほしい。そのためにも英文の論文も用意しておいた方が良いだろう。そういう点を含めて、DPも考えてほしい。

* * *

新垣さんはハーバード大学で活動している。引き続きハーバード大学との連携をお願いする。また、具体的に何か書いてもらえるようにお願いする。

* * *

大坪:

1つ目は、以前セミナーで発表したものに、経済的な紛争後の再従事の要素とSequenceについて諸説や事例をまとめたものを併せる。これは来年の3月までにまとめ、DPか何かにする。

紛争の経済的要因と経済的帰結というのが私の担当。紛争と格差の問題とか、投資関係のデータを集めている。それらを横断的に、経済的要因がどう重要になってきて、帰結がどうなるのかということについて、政府の政策のスタンスを計量的に見ていく。研究会向けにはツーリングモデル的ではないものを書きたい。これが2つ目。

3つ目はケーススタディ。中国とインドネシアとメキシコを対象にする。それぞれ格差が縮まったり広がったりしている事、政府の政策のスタンスが非常に変わり、地域が翻弄されてきた歴史があるという事、民主化のグローバリゼーションの流れにも非常に関わっているという事で、3つの国の格差に関するデータを集めている。半分くらい収集は終わっている。それと、もう少し政治的な要因のプロロジーというものを集めていって、ケースを3つやろうと考えている。そこで何を示すかと言うと、先程のクロスカントリーのジェネラルスピーキングと言えるようなものが、実際に紛争の火種を抱えながら成長している国の中で、どの程度信憑性を持つかを書きたい。ケースを3つまとめて論ずることもあるし、分けて書くこともある。

この3つをまとめたい。それぞれで1本ずつ、何らかの成果を出したい。

佐藤:

平和構築の研究では経済的なものがあまりないので、非常に貴重である。

山本:

大坪さんの研究に非常に興味がある。実際に復興支援などをしていて、これで良いのかという疑問がたくさんある。大坪さんが指摘されているようなものが、全体として欠けていることが多いように感じる。

イチゴ生産が有効だという話になると、どんどんとお金を出して、全部をイチゴ畑に変えてしまう。昔あったプランテーション化を、国際機関が進めているように見える。

世界的に全く競争力がない産業しか残っていないのに、貿易自由化を達成する。フタを空けてみれば、EUの商品で埋まっているということもある。

* * *

大平:

2つ挙げる。「ボスニア・ヘルツェゴビナにおける日本の平和構築支援のその後」については、本年度は現地調査ができなかったので、来年度以降にしたい。研究会が立ち上がる前に、現地に行った。日本のODAで、学校と地域コミュニティー型のリハビリテーションセンターを作っていた。その後、約3年経って、現状と比較しながら、日本のODAがどの位貢献できたのかを考えたい。BLにしたい。

2番目は、UNDPも世銀と同じように、CDAという独自の紛争の分析手法を開発している。元々はイギリスのDFIDの分析手法を取り入れて作ったと言われている。今後、他の分析手法との比較を通して、独自性や問題点を考えていきたい。今年度は、今までのUNDPが関わってきた紛争予防の取り組みについてまとめて、1月辺りにDPを出したい。

* * *

中西:

「イランにおけるアフガン難民・移民の帰還問題」については、昨年の北米政治学会に中間報告的なものを出した。その際に、学会報告に必要なものをまとめてあるので、それをDPにする事は直ぐにできる。日本語では、公開講座で発表するために書いた原稿があるので、写真を付ければBLにすることができるだろう。12月中に仕上げたい。BLの完成は今年度中。名古屋大学の「見る」というテーマの公開講座で、私は「戦争の傷跡を見る」というテーマで講演した。DPとBLを併せ、それ以降に研究した事も入れれば、この研究会の成果としての書籍の1章にできるだろう。

同時平行で研究しているのが、トルコの安全保障政策。非常に重要になる。来年度の科研で取り組む予定で、関係者も呼んでいる。トルコはアフガンやイラクの復興支援に積極的に取り組んでいる。その辺の話はまだまとまっていないが、もう少し切り口がハッキリすれば、「トルコのアフガンやイラクへの復興支援に見る○○」というような個別のテーマで提供できるのではないかと考えている。

佐藤:

児玉さんと中西さんと私の3人で、有斐閣から12月に出る「はじめて出会う平和学」という本を執筆した。有斐閣が乗ってくるかは分からないが、書籍に関しては丁寧な出版社に当たってみる。

皆さんが各学会などで発表する際にも、可能であれば、研究会の名前を出してもらえるとありがたい。櫻井さんが立教大学の紀要に載せる文章にも「研究会の成果の一部」と記述してもらった。そういう方策も考えてほしい。

* * *

定形:

冷戦後、あるいはテロ後のアメリカの戦略の変化と平和構築論について興味を持っている。アメリカが世界秩序を考える中で、平和構築論や民主化論がどう変容してきたのかについて考えている。具体的には、DPを2つほど出せるだろう。

シンポジウムの報告

中西:

9月30日は、GSIDでどのような枠組みができているのか、平和構築研究会でどのような観点で研究を進めているのか、あとDICOS専攻共通「平和構築」についてという3点について報告した。かなり盛大なもので、観客が2〜300名いた。開発系では神戸大学と名古屋大学、東京外語大学、立教大学、関西学院大学などの報告が行なわれた。

佐藤:

次のステップについての話はあったのか?

中西:

その辺りの話は出ていない。今後については不透明。シンポジウムの後、外務省の審議官などと懇談会を行った。そのメンバーの中で今後の連携についての定期的な意見交換会を、外務省と文科省のリーディング型で行うということになった。

佐藤:

外務省系と文科省系がうまく連携できていないという感じがある。本来なら協働してやっていくべきだろう。

国際フォーラム

中西:

来年のシンポジウムに関連して話したい。愛知万博のサテライトフォーラムで、名大が国際フォーラムを開催することになった。著名人を呼ぶ大きなフォーラム。それと関連して、シンポジウムを国際フォーラムと近い日程で行って欲しいという要請があった。基本的にどこも予算がないので、科研の成果を報告するという形で参加することが多い。この研究会の成果を、そこで報告するか?

佐藤:

報告する方向で考えたい。

年度内の計画

佐藤:

来年度の予算を次回に決めたいので、それまでに予算が必要なものを私宛に報告してほしい。

次回の公開研究会に関しては、まだ具体的には決めていない。誰か候補があれば、教えてほしい。

大平:

次回でも良いが、来年度以降のメンバーについて検討してほしい。

佐藤:

メンバーは次回に検討する。適した方がいれば紹介してほしい。あと、もっと若手を入れた方が良いので、関心のある方がいれば誘ってほしい。

次のBLは、2年前の明石さんと小和田さんの講演録をまとめたものを出版する。現在、了解を求めている。

次回予定

2005年1月21日(金)


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