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第2回[2003/07/04]

参加者

研究会メンバー:新垣、大平、児玉、佐藤、中西、二村
アシスタント:山本、杉本、早川

新垣報告

新垣:

まず、アメリカに行った際のネットワークミッションの報告を行う。A大学のaさんと会った。あくまでブレーンストーミングのレベルだが、途上国の若手のリーダーを20〜30人集めて、総論的なことをAで、各論的なものを名古屋大学でトレーニングするといった理想(逆でも良い)も提案された。本研究は、彼らにとってもメリットがあるプロジェクトなので、協力的な印象を受けた。

B(国内大手NGO)のbさんに会った。平和構築の研究の担当者を立ており、平和構築研究には時間を掛けて、じっくり取り組みたいというスタンスである。その意味で、こうした研究チームとの協力は必要である。基本的なスタンスとしては、彼らのやっているプロジェクトを出して、それをケーススタディとして分析して、更に良い方向にするにはどうしたら良いか提言する。

UNDP本部に行った際には、「フロンティアの部分、例えば「調停」や「文化と紛争」などに取り組むのであればぜひ協力したい」と言われた。

続いて、JICAに行った際の報告。独立行政法人化して「復興」が大きな柱になり、平和構築支援を今後拡充していく。新しく平和構築支援室が設置される。ただ、この平和構築支援室の業務は、実際に平和構築プロジェクトを実施管理することではなく、評価や調査、案件発掘やデータ分析などといった分析分野が中心になりそうだという印象を受けた。また、人材確保にも本格的に取り組みたいようだ。内部的には、ガバナンスを課題としている職員は、潜在的な平和構築の専門家になる可能性がある。もう1つは、在外で活動している方、例えばJPOや協力隊の経験者。いろいろと協力の考え方はあると思うので、相互にメリットが生まれる形で、協力していきたい。

自分の印象ではAとJICAが特に強い関心を持ってくれていると感じた。まず私たちの研究会の内容がどこに向かうのかをしっかり定めて、初めて協力できると思う。研究会の今後の方向性が重要である。

報告に関わる意見交換

佐藤:

前にJICAの評価管理室室長をやっていたcさんに会ったが、JICAも評価を企画の段階から入れ込んでいく方向に動いていくようだ。平和構築案件の評価がJICAの興味かなと感じている。

新垣:

JICAと協力していくことで、どういったメリットが本研究会にあるのか検討する。まず小さなプロジェクトでの協力を積み重ねていく必要がある。

佐藤:

CCDIでは、東ティモールについてJICAと関係していたりしないのか?

杉本:

東ティモール支援でJICA中部センターを中心に協力はしている。

児玉:

平和構築支援室の予算や人員は?

新垣:

まだ確定していないとのことでした。

中西:

自分達が何をするのか決めるのが先決ではないか?その後で、どの部分をどこと協力していくかを決めていくのが望ましい。

新垣:

それと同時に、1年間はいろいろな所に石を投げてみる作業は必要だろう。

* * *

佐藤:

JICA米国事務所のdさんが、イラクの調査結果を研究会で報告してもよいとのことである。10月位に彼をワシントンから招聘して、イラク問題を議論する中で、1つのプロジェクトのきっかけにならないかと考えている。

大平:

ボスニアの方で平和構築関係のことをしているeさんという有能な方がいる。彼にも話を聞いてみるのが良いのではないか?

佐藤:

では、予算的に余裕があれば、dさんなどを呼ぶイベントを10月頃に考えてみても良いか?

一同:

了承

佐藤:

Aとの関係では、岩波講座のような本を作る際に、この部分の執筆に協力してもらえないかと提案する。それから研究者の交換として、名古屋大学の3〜4ヶ月の客員研究員ポストを利用したい。現在、推薦できる人がいないか問い合わせている。その間、プログラムの準備をしてもらうとか、サマースクールみたいなものをやってもらうのも手である。それを今後のステップにすることもできる。

新垣:

研究というスタンスからすると、その中でディスカッションやシミュレーションなどをして、そのデータを分析するといったフィードバックもあるだろう。サマースクールみたいなことは予算的にできるか?

佐藤:

もちろん本研究会の予算では難しい。JICAや文部科学省などにプロポーザルを出していく必要がある。

新垣:

Aのあるプロジェクトではプラクティスの部分をかなり重視しており、本研究会とも同じトーンでやりたいようだ。研究参加はもちろんできるだろうが、それからどうするか?という部分が重要である。

児玉:

研究の方向性に関しては、1つは地域研究で進める方向性があるが、かなり難しいだろう。もう1つは方法論で進める方向性があり、こちらの方がより良い結果を残せそうだ。もしプラクティカルな方向性を考えるならば、アメリカの期待するものに応えるには、相当な労力が必要で、ちょっと難しい気がする。方法論であれば、非暴力主義の研修などが考えられる。

佐藤:

確かに、アメリカはプラクティカルな部分を重視する傾向がある。協力したとしても、こちらまでアメリカ的なスタンスでやる必要はない。但し、方法論だけでは空想的なもので終わってしまう可能性もあるので、それは避けないといけない。

二村:

Aの協力は個人ベースか組織ベースか、どちらで行われるのか?

新垣:

個人ベースで行うケースが多い。もちろん、組織ベースでの協力も考えられるが、それは個人の協力の様子を見極めながら行われるだろう。

児玉報告

児玉:

続いてオランダ視察の報告を行う。「紛争予防における市民社会とNGOの役割」のプロジェクトに参加してきた。かなりプラクティカルな問題とも関わった内容で、この研究会とも大いに関係を持つだろう。最終的に、2005年に国連で国際会議をもつ。それまでに地域でも会議をもつ。研究と実践を兼ね合わせたNGOのネットワークを作るのが目的である。たくさんのNGOが集まり、国連の方も参加していた。「具体的に何ができるのか?」「どういったネットワークが築けるのか?」を研究する。
 今後の予定は、来年、北東アジア地域でNGOの会議をもってほしいとの要請がある。韓国か日本、あるいは両方でやっても良い。北朝鮮を呼ぶかどうかも大きな問題になる。それが来年なので、かなり早いペースで考える必要がある。これをベースに、できればJICAなども巻き込んで、取り組んでいくのが1つかなと考えている。この会議は、本研究会の趣旨にも非常に合っており、かなり有効。
 パレスチナなどで非暴力主義のトレーニングをしているNGOもあって、その人達とも協力できそうだ。日本ではあまり馴染みがないが、プラクティカルという意味では、こうしたトレーニングなどの活動も面白いのではないか?

報告に関わる意見交換

佐藤:

先日、日本に「イスラエル・パレスチナ遺族の会」の人達が来て、広島を訪れ、日本人がどのようにアメリカへの憎悪を克服してきたかなどを視察していったようだ。

児玉:

日本では、そういった非暴力主義や平和運動のトレーニングであれば取り組みやすいかもしれない。
  少し話は変わるが、来年の7月5日から10日にハンガリーのシュプロンでIPRAの会議がある。私の希望としては、このテーマでミーティングを開けたら良いなと考えている。この研究会からもできるだけ参加し、報告してもらえるとありがたい。

地域研究

中西:

ここまでの感想としては、この研究会の全体的な枠をどうするのかが課題になっている。方法論を志向するのは重要だ。一方で、そのままでは文部科学省に出したプロポーザルをどれくらい実行できるかが不安でもある。そこには、もう少し地域研究的なもので書いた。例えば、グループに分かれて研究するというのも1つの手だと考える。もちろん同時並行的にやる部分もあって良い。

児玉:

プロポーザルの魅力を出すために、開発にも力点を入れて書いている。ただ、研究者のメンバーには紛争解決や復興の方が多そうなので、厳しいとも思う。開発をどこに位置付けるかを考える必要もある。復興なら位置付けやすい。開発はとても広い概念なので、ある程度限定しておかないといけない。メンバーも限られるので、地域研究と方法論を同時に担当することも考えないといけない。

佐藤:

私はむしろ、最終的には方法論で良いと考えている。もちろん普遍的な方法論というのはありえない。地域研究を行い、地域ごとの特性を知ることによって、個別的に提案できるようになる。
  地域研究については、今年はいろいろな地域に手を着けてみて、来年度以降その中からいくつかに絞っていく。日本がODAを入れることができる地域が望ましい。それに対する具体的な提言を出していく。それであれば、方法論ということで終わっても良いのではないか。

児玉:

具体的なものということになると、3〜4箇所に絞らないといけない。ユーゴと中東は当然入るだろう。北東アジアはやってみたいが、没になる可能性も高い。C大学に韓国の研究者が来ている。北朝鮮の専門家なので、一度話してもらうのも良いのではないか。他に挙げるとすれば、インド・パキスタンなど。

新垣:

足りないところは後で、執筆参加などにより足すこともできる。

児玉:

どちらにせよ、全ての地域を網羅することはできない。アフリカは難しい。

中西:

地域研究を行う場合には、予め横断的な視点やテーマを決めておかないとバラバラになってしまうのではないか。

二村:

1つ提案がある。中米紛争というものが80年代にあって、国連が入って調停を行って解決した。その後、復興計画などが進んでいる。知り合いの専門家がD大学にいる。彼に紛争の調停過程やその後の復興過程に関して話してもらえると参考になる。特にコロンビアは現在進行中なので参考になると思う。

佐藤:

私のイメージとしては、各地域は体系的なものではなくて事例研究で良い。その事例研究を踏まえて、方法論を模索していく。対象地域に関しては、まず我々のリソースがあるかどうかも大きな要素になる。リソースとして足りない部分は、Aから応援を頼むのも手である。まずは、4年後のゴールを何処に置くか定め、そこまでのロードマップを考える必要がある。

二村:

地域ごとにケーススタディをやることは必要だが、地域ごとに縦割りで終わってしまってはあまり意味が無い。そうではなく、地域ごとの紛争や平和構築に共通のものがあるかどうかを探るために、終わった紛争の例を分析・比較することも必要になると思う。最終的な成果の中にも、そういった視点は入れる必要がある。

成果物

佐藤:

私から提案した成果物のアイデアに対して、具体的にコメントがもらえるとありがたい。全7巻で考えている(参考資料)。この研究会以外の人にも、研究協力者や執筆協力者として参加してもらうのも良いだろう。

児玉:

このように予め決めておくことは有効である。

佐藤:

それぞれの巻について、編集のリーダーを決めておいた方が良い。地域ついては、それぞれの巻の中で触れても良いし、単独で1冊にまとめても良い。

中西:

各巻の題名の中にも平和構築の諸概念を入れた方が、新しいものであるという印象を与えるのでないか。例えば、『民主化の定着』とか。

佐藤:

あまり時間がないので、掘り下げて議論することはできない。次回にはまとめたい。それから、NGOの会議といったイベントを行うことも成果の1つである。

児玉:

その場合は、主体ではなく、基本的には仲介のような形になるだろう。

佐藤:

そうしたイベントへの参加者も巻き込んでいけると良い。

連絡担当者

大平:

国内連携先候補に関して、新垣さんの報告の中にUNDPの東京事務所に協力を求める方が良いという話があった。そうであれば、私がfさんに話してきても良い。

佐藤:

では、UNDPは大平さんにお任せする。AとJICAには私と新垣さんが連絡を取る。国問研は中西さんにお願いする。UNHCRは、今度ジュネーブに行った時に本部を訪れる。世銀は大坪さんにお願いする。NGOは児玉さんとCCDIにお願いする。

議事録及びホームページ

山本:

ホームページは月2回のペースで更新。また、研究会を開催するごとに更新する。議事録が柱になる。これは英訳もする。CCDIには議事録作成からお願いする。

※CCDI杉本・早川より、ホームページ案について説明する。

児玉:

成果物を英訳することの方が重要なのではないか?

中西:

日本語と英語が同じである必要はない。議事録の英訳なら、ショートバージョンでも良い。

山本:

他に、データベースを作ろうとも計画している。文献検索のデータベースを作りたい。データベースが充実することで、アクセスも増える。

次回の日程

※話し合いの結果、下記のように決定した。

第3回 平和構築研究会
9月19日(金)午後3時〜
3時〜5時は内部的な話し合い。
5時〜7時は公開で、櫻井より報告。


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