第16回要旨[2006/3/10]
参加者
佐藤安信(東京大)、児玉克哉(三重大)、中西久枝(名古屋大)、二村久則(名古屋大)、川喜田敦子(東京大)、山本哲史(名古屋大、アシスタント)
1. 今年度(2005年度)及び次年度(2006年度)予算について
佐藤から予算に関する概要説明があり、承認を得た。
- 今年度は旅費がかさんでしまい、謝金やその他の経費として予定されていたものをまわすことになった(佐藤)。来年度は500万程度(正確な額として、後日440万円に修正)ということになるので、成果公表を中心に構成することになる(佐藤)。今年度は間接経費の残余がなく、来年度も見込めない(佐藤)。
来年度分の予算を必要とする出版物としては、NGOシンポ、GPPAC(児玉)、分離壁(中西)など、少なくとも3号の出版が見込まれている。
2. 実績報告書
科研実績報告書のドラフトが示され、業績記入に関する議論が行われた。
- ディスカッションペーバーは「雑誌」として、ブックレットは「書籍」としてそれぞれ計上していること(山本)が説明された。辞典への部分執筆や他の研究費による報告書などは「雑誌」の枠に納められるか否か(二村)が問われ、後日担当者に確認することとなった。
3. 叢書について
懸案となっている叢書出版についての確認が行われ、特にキー概念についての議論
が活発に行われた。
- まず、国連大学のpopovski氏が既に原稿を提出している状況(佐藤)が紹介された。そして構成に関して、これまでのディスカッションペーパーをベースにしてまとめ、総論部分として、人間の安全保障[担当:佐藤]、国際政治学[中西]、平和学[児玉]からの視点を付加すること(佐藤)が確認された。総論部分の字数について質問があり(中西)、一万字から二万字程度で予定している(佐藤)ことが確認された。また、アフガニスタンの山本芳幸氏も執筆可能との返事をいただいていることなども紹介され(佐藤)、共同執筆者のアウトライン、第一稿を五月の連休明けに提出し、つめてゆくというスケジュールが確認された。
叢書の出版形態について、本として出版するのか(児玉)が問われ、その予定であり、特定の出版社を視野に入れている(佐藤)ことが示された。想定読者としては、「初めて学ぶ平和学」が大学生レベルであるとすれば、今回は大学院生レベルで計画している(佐藤)ことが確認された。「初めて―」は構成面で一貫性の問題が指摘されていることから、叢書執筆の際には何か鍵となるような概念を掲げてみてはどうかという提案(児玉)がなされ、例えば現状における紛争地域に視点を限定せず、全ての人の紛争と平和構築につながる内的要素であり主体的課題としての「人間開発欠如」などがキー概念候補の例として示された(児玉)。この点、先行研究では平和構築と開発の関係はまだ本格的には論じられておらず、開発に対する問題意識は執筆者間で共有する視点として重要であり(佐藤)、平和への参加のプロセスとしての和解のワークショップや人権教育なども「人間開発欠如」への取り組みとして考えられるとすれば、今日のシンポの中でも論じられることから本研究との連続性が期待できる(中西)ことなどが議論された。例えば「人間開発欠如」を概念的に明確化するために英語で考えれば、"Lack of Human Development"ではなく、"Underdevelopment of
Human Development"として把握できるのではないか(二村)という意見も出され、その点について言えば、アフガンやイラクでは"Human Development"の前提となるコミュニティ破壊が起きていると考えられるなど、事例に即した記述や考察が可能となる(中西)ことや、ドイツでの人権教育の事例に当てはめてみても興味深い(川喜田)ことなど、キー概念に関する議論が詰められた。