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第3回[2003/09/19]

参加者

研究会メンバー:櫻井、佐藤、中西、二村、山本
アシスタント:山本、杉本、早川

山本芳幸さんとの顔合わせ

佐藤:

山本芳幸さんは国連難民高等弁務官事務所アフガニスタン地域事務所に勤務した経験があって、現在は法学研究科に赴任している。特に人材育成面において、協力者として入っていただきたいと考えている。

<各位簡単な自己紹介及び概要紹介>

佐藤報告

佐藤:

上智大学の村井先生に会ってきた。上智で開催した紛争関係のCOEについての話を聞いてきた。COEはローカルからグローバルを見ていくという趣旨で、紛争にフォーカスしたものではないが、地域研究の過程で当然出てくる地域紛争をどう捉えるかという事である。山本さんも参加していた。

山本:

その時の報告をしたものがそろそろできあがる。

佐藤:

それについてもぜひ聴きたい。我々としては、どういう切り口で行くのかまだはっきりしていない。今までの2回の会議で、どういう方向性でやりたいかの議論を行ってきた。この間は新垣さんに難民の問題を話してもらった。開発系の先生はもともと難民に関心があった訳ではなく、その意味では新しい取り組みである。彼がJICAにいる当時は、難民は開発の問題ではないと思われていたようだ。10月からJICAに平和構築支援室ができる。国際協力総合研修所の所長と会って話したが、まだ内容は白紙状態のようだ。
 内閣府に打ち合わせに行ってきた。内閣官房副長官の私設懇談会が提出した報告書の具体化を検討していて、本研究会にもブリーフィングしてほしいとの事だった。特に今回インタビューしたのが文科省から出向している方で、紛争関係の人材育成についての検討がこれから中心になっていくので話を聞きたいとの事だったが、我々自身が人材育成にまで踏み込めるかどうか分からない。教官側にもそれなりの経験や知識が必要である。
 去年公開講座を開いて、今年も予算が付いたので、私の専攻を中心に勉強会を始めようとしている。来年度は平和構築を1つの科目として出してある。やり方はオムニバス式に各教官に任せて何人かでやるか、客員でハーバード大学あたりから人を呼べないか考えている。アジアは弱いから、こちらでやってもらえるならありがたいとの事である。我々としても、大学側にそれ程ノウハウがある訳でもないし、実際に現場にいた人に協力してもらえるとありがたい。そう考えていたら山本さんが来るという事で非常にありがたい。

報告に関わる意見交換

山本:

上智大学での報告はぶっつけ本番に近い感じで喋った。平和構築やそれに近いことを研究されている方は全世界からかなりフィールドに来るが、現実と研究の間でギャップが大きい。しかも研究者間での共通の専門用語すら確立されていない。とにかく同じ言語すら喋っていない状態だというのが我々の印象で、そこから始めないと研究も始まらない。現場で働いている人はアカデミックからの助言が欲しい。そこで、共通言語づくりを目的に、用語を整理していった。パワーポイントで資料がある。

佐藤:

早い段階でもう一度お願いしたい。私も紛争に対する見方が違うと感じる。そこから近づかないと、ギャップが埋まらない。

* * *

山本:

日本にはプロフェッショナルスクールがない。開発に関する人材育成をやっている所はあるが、紛争解決に必要なノウハウは全く異なる。アメリカやイギリスなどにいくつかあるが、日本にはない。政府でも、紛争が起こっても、現在の法律ではJICAの緊急援助隊も出られない。出られるのは内閣府の国際平和協力機構だけだが、そこには事務局しかない。これではおかしいので、そこに絞って人材育成を立ち上げなくてはいけない。ただ、いきなりできることではないので、プロフェッショナルスクールの内容を実験的に講義して、それを実験材料に、将来的に人材育成のプロフェッショナルスクールやコースを作る際の基礎にしようと考えている。

佐藤:

本研究会の成果として、論文や本を出すということと共に、平和構築に関する人材育成も含めた研究教育研修センターを立ち上げたいと個人的には希望している。現在、専門大学院としての特色を出さなければいけないという議論があって、私としては平和構築を出せないかと言っている。うちの研究科だけでやらないといけない話でもないので、法学部などいろんな専門家が集まって立ち上げられたらなと考えている。1つのNPOのような形でも良い。ぜひアイデアを出して欲しい。

山本:

プラクティカルなニーズは、日本だけでなくアジア全域にある。UNHCRのトレーニングは基礎的な情報として有用である。そこではバッグパッキングの方法から理論まで幅広く教えている。本当に現場で活動できる人を育てようとしたら、そこまでトレーニングしないといけない。将来的に考えているのは、UNHCRとか紛争のトレーニングを専門にやっている組織がアメリカやイギリスにあるので、タイアップして教官はいろんな所から集めるしかない。対象も日本人に限らず、初めから世界中の人を対象にすれば良い。それ自体が、日本が一番やりたがっている国際貢献になる。

* * *

佐藤:

大学の枠ではできないことも多いので、1つのNGOを立ち上げるのは良いかもしれない。コアメンバーを作って、いろいろな人を引っ張って来て走らせたい。経験がある人じゃないと研修はできない。一方で、一歩下がった所での理論研究や、その国の現状が分かる地域研究も重要である。これは1つの研究科でできる事ではないから、ネットワークを作って、必要な時に必要な人を連れて来られるような機動性を持った組織が望ましい。

山本:

現場では色んなトピックが駆け巡るが、やらなければならない事に時間を割かれて考える余裕がない。そこは大学や研究機関にお願いしたいという部分がある。

<山本芳幸さん退席>

山本報告

山本:

新垣先生と2人でジュネーブに行ってきた。目的は、難民関係の活動を行う機関と平和構築活動との関わりを探ること。インタビュー対象はUNHCR、赤十字、国際移住機関、UNDP。メインはUNHCR。全体として、人道援助と平和構築の関係では各機関それぞれの公式な立場においても個人的なレベルにおいても未だ方向性がはっきりしていないという印象を受けた。
  非公式にワーキンググループを作ったりしている。従来、難民というのは緊急援助の対象であったが、これまでの発想をガラッと変えて、難民をアクターとして捉えるような動きがある。現段階では、実際に平和構築ということで捉えられる活動はあるが、それは平和構築活動としてやっているというより、各機関それぞれの活動が捉えようによっては平和構築と関係しているというもの。
  私の所見では、非政治中立を謳うUNHCRと他の政治的機関とのギャップ問題をどう捉えるといった問題で、アカデミックな立場からはその関係の理論モデル・ビルディングについて関わっていけるのではないかと考えている。

報告に関わる意見交換

佐藤:

イラクの爆破事件もあったが、セキュリティに関する話とかは出ていましたか?いくら人道援助機関が非政治中立とは言っても、攻撃される事によって、非政治中立性が崩れる事態もある。

山本:

中立性をどう保障するかといった話は聞けなかった。

二村:

IOMは何の略ですか?

山本:

International Organization for Migration、国際移住機関。

佐藤:

移民ということになるので、強制的な移民である「難民」よりも言葉が広い。

山本:

オペーレショナル活動に力を入れている機関。国連機関ではない。ICRCでやっている事で、人道法や人道原則を一般の企業に教えるプログラムを持っている事が興味深いと新垣先生が仰っていた。ガイドラインや原則があるのかを聞いてみた。1つの目的に対して、いろいろな機関をまとめていく作業の難しさを感じた。

佐藤:

ICRCとは赤十字国際委員会で、国際人道法と呼ばれるものをスポンサーになって作成してきた。ジュネーブ条約など、戦争法と呼ばれ、戦争を起こしたもの同士が守らなくてはいけないもの。但し、中立性を保つために、例えば政治犯と面会して拷問が行われていても、トレードオフとして公表できない事があり、それに対しては医療関係者などから反発もある。

中西報告

中西:

7月29日から8月22日までイラン、8月23日から9月1日までトルコに行って来た。主な内容は、UNHCRとイラン政府によって昨年4月から本格的に実行されている「イランにおけるアフガン難民の帰還プログラム」がどのように進んでいるのかと、アフガン難民の実態がどうなっているのかに焦点を当てている。
 帰還プログラムはUNHCRとイラン外務省とが連携して行っている。これにより250万人いた難民キャンプが、200万人位になり、今年に入ってから180万人位になった。しかし、実際には50万人を見込んでいたのに、半分にも満たない。帰還は進んでいないという統計データがある。
  帰還が進まない理由を、実際にアフガン難民にインタビューした。家族で来ている場合は、父親が視察のために帰ってみる。ところが、ほとんどの場合、状況が悪いので戻ってきてしまう。その繰り返しで人数が減らない。
  一方で、帰らないアフガン難民の人材育成を放っておけないという事で、UNHCRと内務省とNGOの3脚でのプログラムが運営されている。UNHCRの今後の1つの方針としては、アフガン情勢が良くないので簡単には平和構築が進まないだろうが、イランでアフガン児童への教育支援を続けることは帰還のためのインセンティブにならないという判断で、教育支援プログラムを打ち切る検討をしている。そうなった場合には、NGOが中心になったアプローチが必要である。その他報告したいこともあるが、まだ総括してない。11月にカナダで開かれる北米中東学会で報告しようと考えているので、それ以降にまた報告できるだろう。

* * *

佐藤:

来年度、中西さんはアフガニスタンに行く予定である。

中西:

アフガニスタン教育大臣の日本の教育支援アドバイザーとして、カブールに赴任する。前任者は1年間だったが、私は半年間にしてもらった。

佐藤:

今回はアフガニスタンに帰る難民の話だったので、連続性のある話である。

中西:

途中一度帰ってくる予定なので、この研究会でも報告したい。

その他

櫻井:

昨日、科研費申請の会議があった。平和構築はCOEに出そうという線で進みそうである。

佐藤:

名前がどうなるのであれ、予算がつくのは間違いない。

櫻井:

いろいろと成果が出てくるので、アジアにおける人材育成の拠点にする事はできるのではないかと感じた。

* * *

佐藤:

来年につながる企画を開くのかどうか?タイミングは1月末位しかないが。

二村:

もしシンポジウムを開くなら、準備期間との関係で厳しい。それに試験との絡みもあるので、難しいのではないか。

佐藤:

来年度の方が良いかもしれない。もし来年でも、もう考え始めないといけない。外国から来てもらって、話をしてもらうという手段もある。
  早い段階でNGOとの連携も作りたいと考えている。中部大学のnさんもその辺りに興味があるようだ。NGOの人に来てもらって話してもらいたい。
  地域研究者ももっと取り込まないといけない。アジアで大きいところはスリランカ、インドネシアなど。

二村:

前にも言ったが、中米紛争。

佐藤:

皆さんにどんどんとイニシアティブを取って動いてもらいたい。

中西:

1月22〜25日にJICAの関係でインドネシアに行く。インドネシアのネットワークは、その時に確立してきたい。

佐藤:

水曜日のお昼にインフォーマルな形で勉強会を開きたい。意見交換をして、意識を高めていきたい。

ホームページ

※CCDI杉本・早川より、ホームページ案について説明し、了承を得た。必要な資料・データについてはメーリングリストにて依頼する。

次回の日程

※ 話し合いの結果、下記のように決定した。

第4回 平和構築研究会
11月14日(金)午後1時30分〜
1時30分〜3時は会議
3時〜5時は講演


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