第14回要旨[2005/10/21]
参加者
佐藤安信(東京大)、児玉克哉(三重大)、新垣修(志學館大)、中西久枝(名古屋大)、大平剛(北九州大)、北村友人(名古屋大)、遠藤貢(東京大)、山田里佳、杉本正次(CDIC)、早川真和(CDIC)
1. 公開研究会、シンポジウムなどの報告・今後の予定
平和構築研究会が主催・共催する公開研究会やシンポジウムに関する活動報告と今後の予定を紹介した。
- 10月20日、東大の人間の安全保障プログラムとの共催で公開研究会を開催した。ロヒンギア難民の事例を用いて、日本の難民認定の問題について扱った(佐藤)。
- 10月21日、トランディショナルジャスティスに関する公開研究会を開催する(佐藤)。
- 11月26、27日の駒場祭に合わせて人間の安全保障プログラムがシンポジウムを開く予定なので、共催したい。テーマは「破綻国家と難民 −アフリカの紛争事例を中心に−」で検討中。国際開発学会との関係で名古屋には人が少ないので繋がない(佐藤)。
- 先日、平和構築スペシャルセミナーとして、トルコから来ているドュライ・デードリヒさんの研究会を行った。これを全3回検討している。後は11月中旬と12月に1回づつの予定(中西)。
- パレスチナ人のアーサム・タゲイミーさんという研究者を招聘している。3月までいるので、その間に1〜2回は研究会が開けるだろう(中西)。
- 3月に国際シンポジウムを開催したい。事前に予算を確定すれば3月でも問題ない。「平和構築とテロ」といったテーマが考えられる。便利が良いのは東京での開催。名古屋だけでなく、広島や神戸などと繋いでも良い(佐藤)。
2.予算
今年度の予算についての確認を行った後に、予算との関わりが大きいブックレット(BL)の発行と国際シンポジウムの開催に関する意見交換を行った。
- 実際に使用できる予算が約190万円残っている(山田)。
- BLに関しては、2冊は必ず出せる予算がある(杉本)。少々遅れるが、BLを出す予定(大平)。11月の調査を基に、パレスチナの分離壁のインパクトに関するBLを出しても良いかなと考えている。来年に変更可能(中西)。BLとして作成しているが、予算によっては、ディスカッションペーパーに変更可能(新垣)。
- 予算状況から言えば、国際シンポジウムを開催できる(佐藤)。全体で90万くらいは考えた方が良い(杉本)。タイの教育副大臣を呼べると、かなりインパクトがある(北村)。世界的なテロ研究の第一人者であるクマグラナトラーさんも呼べると良い。テロに関する本も何冊も出している(児玉)。児玉さんと北村さんに、打診してみてほしい(佐藤)。
3.出版物の計画
まず出版物の構成案が佐藤より示され、これを叩き台として、出版物の構成・テーマなどに関して積極的な意見交換がなされた。
- 出版物は「理論部」「事例・地域部」「政策部」の三部立て。全三冊。
- 「理論部」…佐藤が責任者。第1章「平和構築学の方法論」で、まず土俵を作り、新しい視点を出していく。その上で、「紛争管理ガバナンス」「紛争要因分析」「人道支援」「人間開発、共生と紛争予防」という4つのアプローチを絡めて構成する。
- 「事例・地域部」…中西が責任者。あとは各論として無視できない事例である「カンボジア」「東ティモール」「スリランカ」「中東、アフガニスタン」「コロンビア」「アフリカ」を扱う。
- 「政策部」…児玉が責任者。「理論部」「事例・地域部」の内容を受けて、どういった政策論を打ち出せるのか───総論と各論、そして結論としての「平和構築学の現状と課題」で、今後の展望という風にまとめていきたい。また、それぞれの節にも責任者を置く(佐藤)。
- 「人間開発、共生と紛争予防」は、特に教育分野に関しては少しづつだが成果が出ている分野である(北村)。
- 「紛争要因分析」に関しては、世銀やUNDPだけではなくて、JICAが作っている手法なども含めて書いた方が良いのかなと考えている(大平)。
- どこまで実務的なことに触れて書くのか?あるいは非常にアカデミックなところに留まって書くのか?第2章を書くスタンスを揃えないといけない(北村)。実務に使えるような理論を出せれば、新しい研究と実務の連携という意味で有益だと考えている(佐藤)。
- 第1章と第2章の繋がりが本当にうまく行くのかを懸念している(新垣)。
- 第2、3部の成果を第1部にフィードバックしたり、あるいは第1部の内容と第2部の事例のテーマとの整合性を持たせたりしないと、バラバラな印象の本になってしまう。それぞれの執筆者から具体的にキーワードを聞き、もう少し視点をハッキリさせて編集を行いたい(中西)。「カンボジア」はトランディショナルジャスティス。時間がかなり経過した上でのトランディショナルジャスティスを中心にした議論になる(佐藤)。「東ティモール」は和解(児玉)。「スリランカ」は国内避難民。国内避難民を紛争の結果だけではなくて、紛争の中で道具や資源としてどのように利用されていたのかということ(新垣)。「中東、アフガニスタン」は難民・移民・移動民。アフガニスタンでは、彼らに対する人間開発の問題を取り上げたい。パレスチナでは、彼らの本質的な安全の問題といったものをキーワードにしたい(中西)。「アフリカ」では、テーマに応じて、アフリカの中から事例選択する(遠藤)。これらを叩き台にして、メールをやりとりしながら、もう一度全体の骨子を作り直す(佐藤)。
- 第1部で考えているキーワードの1つは人間の安全保障。言ってみれば、人間の安全保障と開発学と平和学全部を括って平和構築学だというイメージである(佐藤)。この本を貫くキーコンセプトがあれば、書きやすくなる。(児玉)人間の安全保障が何かを伝えるのは難しい。具体的な人間個人に視点を置くということ。要するに個人の平和、平和のミクロ化とも言うべきもの(佐藤)。貫くものとして1つ、共生があるのではないか。マクロからミクロまで色々なレベルでの共生。それを推し進めるのが平和構築学の1つの柱になるのではないか(北村)。
4.今後の研究連絡会
今後の研究連絡会の日程が決定された。
- 次回の研究会の日程は11月18日(金)。公開研究会は止めて、連絡会が終わった後にブレーンストーミングで意見交換のみに時間を使う。
- 1月の休み明け位に1回、3月にもう1度やって計6回になる。